カメラ
映画「落下音」を観た。写真家フランチェスカ・ウッドマンの作品がインスピレーション源だったという記事を見てこれは観なければと思ったのだ。
果たして期待以上だった。
あらゆる画面が作り込まれていていい。様々なカメラのもつ特徴的な、写真的イメージが時代を跨いで連続する。画面には「覗く」場面が繰り返し現れる。鍵穴はファインダーと相似を描く。
自分はあらためてポラロイドカメラの色調と輪郭が好きだなと思った(映画にはポラロイドカメラで写真を撮る場面がある)。
画面はカメラが持つ特性を思い出させる。ピンボケ。二重写。被写体が動くことで消失する輪郭。その時間を記録する事の祝祭性。または冷徹さ。
死者に喪服を着せて生きている人間と並んで撮影するのはちょっと引いた。実際あった慣習でなく映画のためのフィクションだとしたらその方が良いと思う。
想念と現実のカットのつなぎ。深い内側にある言葉で出来たモノローグ。泳いだ後、夏の午後、怠さのなかで身体と心の境界がぼやけるときに現れる呟き。もしぼくが女の子の友達でこんな言葉を聞かせてもらったら、深い秘密をもらった、と感じる一方で時間とともにそれがどんな内容だったか思い出せなくなりそうな。秘密、その事実だけが残るような。
映画は大農家の家屋を軸に百年以上の時間を跨ぎ、カットの切り替わりで時代が移る。父権、共同体、国家、大きな力が暴力装置として無辜の女性たちを脅かして来た事実が密やかに語られる。
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