春だったよ

 風の音で目が覚めた。朝。

遠い轟音が近づいてくる。

映画「センチメンタル・バリュー」を観てきた。物語から自分のファザコンがどう動くだろうか、と覚悟していたけどエンタメとして楽しく鑑賞できた。

父と娘の距離感が良い。長女はしっかりあなたのこと恨んでますから、という態度。父は娘たちに対してまあまあ気安い態度を取るが、それは娘だからというより女性全般にそう、とくに長女には娘というより昔の女みたいな接し方をする。自分と娘は似ていると思っているが支配的ではない。紳士的で魅力のある男性。

皆人間的に破綻が無い。本質的に理性的で他者へ深い思いやりを持つ事ができる。そんなひと達の優しさと苦しさがストレートに描かれていた。


ぼくはエル・ファニング観たさに初日に観に行ったのだけど、彼女がまさに彼女に抱くイメージそのままに物語の中にいてじんと来てしまった。女優の本質と思わせる繊細な感受性を惜しみなく見せてくれる。痛みを慰撫してくれる。


ぼく自身の事。ギリギリのところで生きて来た事をふと思い出すときがある。病院に通い、薬を飲み、不眠と付き合った二十年だ。辛い記憶がきりなく自分を苛むときもあれば、温かい記憶に心を励まされるときもある。温かい記憶だけで生きていければ良いと思うが(そうはならない)。

自分につづくひと達にはできるだけ温かい記憶で生きて欲しいと願う。記憶とは土壌だから。






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